法定後見
法定後見制度とは
世界の最長寿国となった日本においては、独居の高齢者が増加し、同時に、認知症、寝たきりの高齢者が増加しています。
独り暮らしの老人が悪質な訪問販売員にだまされて高額商品を買わされてしまったり、住宅リフォームを繰り返され、あげくのはてに財産を全て失ったという事件もよく耳にします。
いわば、社会的弱者といわれる人たちが悪徳商法などに巻き込まれて消費者被害に遭うことも少なくありません。
このような場合、成年後見制度を利用することにより、事前に被害を
防ぐことが可能となります。
成年後見制度とは、精神上の障がい等(認知症、知的がい、精神障がい等)によって判断能力が不十分であるために、法律行為(契約等)の意思決定が困難な人の支援をする制度で、「法定後見」と「任意後見」の2つが柱になります。
法定後見制度の類型
法定後見制度には、「後見」「保佐」「補助」の3つの類型があります。
3つのうち、どれを利用するかは対象となる本人の判断能力の程度
(申立人の依頼により作成された医師の診断書)によります。
いずれの類型においても、被後見人等(成年被後見人、被保佐人、被補助人)は日用品の購入、日常生活に関する行為は単独で行うことができます。
また、身分行為(婚姻、離婚、認知等)、医療行為の同意等、一身専属的な行為は代理権の対象とはなりません。
遺言も代理の対象とはなりません。
(1)後見(事理弁識能力を欠く状況)
精神の障害等の事情により、自分の行為の結果について合理的な判断ができない状況(本人の判断能力が全くない場合)。
具体的には預貯金の出し入れや日常生活に必要な買い物も自分ではできず、
誰かに代わってもらう必要がある程度。
(2)保佐(事理弁識能力が著しく不十分)
精神上の障害等の事情により、自己の財産を管理・処分するのに日常的に援助が必要である状況。
具体的には、日常生活に必要な買い物は単独でできるが、重要な法律行為(不動産の売買、金銭の貸し借りなどの契約等)は単独ではできないという程度。
保佐人は、重要な取引行為(民法13条)に対して、
同意権・取消権があります。
- 元本を領収し、または利用すること
(元本の領収とは、利息、家賃、地代が生じる財産の受領。預貯金の払い戻し等も含みます)。 - 借財や保証をすること
- 不動産その他重要な財産に関する権利の処分を目的とする行為
- 訴訟行為を行うこと
- 贈与、遺贈、和解又は仲裁合意
- 相続の承諾、放棄又は遺産の分割をすること
- 新築、増築、改築、大修繕をすること
- 贈与の申し込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申し込みを承諾し、または負担付遺贈を承認すること
民法13条以外の行為については、家庭裁判所による代理権付与審判により、保佐人に同意権・取消権・代理権の設定が可能となります。
(3)補助(事理弁識能力が不十分)
精神上の障害等の事情により、判断能力が不十分で自己の財産を管理・処分するのに援助が必要な場合がある状況。
具体的には、不動産の管理や売買、金銭の貸し借り、自宅の増改築等の重要な財産行為について、自分でもすることが可能かもしれないが、本人のために、誰かが代わってやった方がよいという程度(認知症の症状がでたり出なかったりの状態)。
本人のために必要な範囲で援助を行う。